第2回目は、つい先日も健康テレビ番組で取り上げられたばっかりで、 既に日本人にもすっかりお馴染みとなりつつある、通称’ピロリ 菌’のお話です。正式名は、Helicobacter pylori(ヘリコバクター・ピロリ)といいます。ピロリ菌という、呼び名は、番組中で出演者さんにも指摘されているように、どこか憎めない、脱力系というか、ゆるキャラみたいな響きを持ち、この感染症の怖さをスケールダウンしているかもしれませんねー。日本人は昔から、胃(及び十二指腸)の病気が多いということが周知の事実です。その理由しては、生活習慣として塩分の過剰摂取、遺伝的な背景など が推測されていました。誰も、pH 2などという強烈な胃酸が降り注ぐ環境になんて、 菌が住める訳 ないと思い込んでいました。ところが、今から30年以上前に、 2人の豪州人によってピロリ菌は 発見され、現在では、胃への感染が、慢性萎縮性胃炎、胃十二指腸潰瘍、胃がん、 胃悪性リンパ腫などのいわゆる胃病のみならず本態性血小板減少性紫斑病や鉄欠乏性貧血などの胃腸以外の病気の発症にも深く関わっていることが明らかとなっています。ただ、番組内でピロリ菌が放出する物質が動脈硬化を進める可能性・・といった部分にも触れていましたが、10年以上前にもその関連を調査した論文がチラホラ見られたものの、それに反対する意見も多く、ナンデモカンデモ、ピロリのせいと言うわけではありません。関連が強いといわれる胃がんは誰しも避けたい訳ですから、ピロリ感染と慢性萎縮性胃炎が明らかとなれば、除菌治療と称したピロリ排除が必要となります。しかし、除菌は薬の効き目に個人差がでて失敗する事もあれば、副作用がでることもあります。更に、頻度は少ないものの折角除菌しても胃がんになってしまうことも有りますので、除菌が万能治療と言うわけではなく、そういう意味では除菌後でも定期的な検査は重要と思います。特に除菌後胃がんの報告は最近増えており、除菌前胃がん(胃の奥の方にできやすく、赤っぽく、隆起型が多い)とくらべて、除菌後では胃の上の方にできやすく、見た目も白っぽく、平坦型が多いという特徴が判ってきました。この特徴からすると、なかなか見つけにくい性質ともいえ、内視鏡医はより慎重な観察が必要となります。まー、それはさておき、皆さんの中でピロリ菌のことこも、胃のこともお調べになったこともない方は、一度検査されてもいいかもしれませんね。なかでも、自分は今まで胃の調子が悪くなったためしがない、とご自慢の方もご注意ください。沢山の胃粘膜を拝見してまいりましたが、慢性萎縮性胃炎の結構進んだ方って、無症状のことが以外に多い様に思います。私見ですが、萎縮性変化の進行とともに胃粘膜を刺激(攻撃)する胃酸分泌が低下していることに加え、粘膜は大量の粘液に覆われ、痛みなどを感じにくくなっているのでしょうか? ですから、無症状≠健康とは皮肉なものだと思います。
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